パンフレットの英文を意訳。
若きスター・コウイチが率いるカンパニーがある。創立したのは天才と言われたコウイチの兄だ。兄はブロードウェイでショーをする夢を実現した。しかし、そのショーは酷評を受けた。その結果、彼は落胆し自殺してしまった。兄の望みを受け継いだコウイチは、兄が成し遂げられなかった夢にとりつかれる。
だが、兄の死以来、妙なことにカンパニーを次々と事故や災いが襲うのだった。それはコウイチと客席の子どもとのフライングで危うく子どもが落下しそうになったことからはじまり、コウイチのフライング中に起こった事故に続いた。コウイチを支えていたロープが切れてセットに叩きつけられたのだ。さらにカンパニーのスターの1人でコウイチの義弟のツバサがバイクで重傷を負った。信じられないことにつり橋が崩壊、ツバサは左足を複雑骨折し、ステージに立てなくなった。コウイチの義姉はショーを中止にするよう勧めた。彼女は今、カンパニーのマネージャーの妻で、かつてはコウイチの兄の妻だった。しかし、コウイチはショーの続行を宣言する。「何が起ころうとショーの幕だけは開けなければ。Show must go on!」それは兄の信念でもあった。
コウイチの「ジャパネスク・ショー」は幕を開け、ジュンや多くの仲間がコウイチを支え、助けていた。コウイチはその時、ステージで踊るツバサの幻を見た。ショーは大成功し、ショーを見ていたブロードウェイのエージェントがコウイチに言った。「君のお兄さんがかつて夢見たブロードウェイのインペリアルガーデンシアターに来ないか。君のショーを上演する用意がある」しかし義姉は反対した。彼女はコウイチにコウイチの兄が命を落としたブロードウェイとは関わってほしくなかったし、自分も行きたくなかった。一方、コウイチはブロードウェイ行きを決意していた。ツバサを支えているカンパニーの仲間もコウイチと行くことを決意していた。コウイチはブロードウェイに向かい、ツバサは日本に1人残された。その夜、コウイチは悪夢を見た。ツバサが白い鯨に足を引きちぎられ苦しんでいる夢。
ブロードウェイのインペリアルガーデンシアター、コウイチは兄がいつも夢見ていたが成功することができなかったステージに立っている。劇場は兄の感情に満ちていた。そこでコウイチは不思議な人たちと出会った。裏方の老婦人と、共演することになるひとりの若いメンバー。実は、その若いメンバーはコウイチの義姉で、老婦人はカンパニーのマネージャー。ふたりともこっそりコウイチを助けるために変装してブロードウェイに入り込んでいたのだ。ツアーが始まった。全米ツアーの後、カンパニーはついにブロードウェイのインペリアルガーデンシアターに到着した。ブロードウェイ初日の公演後、ショーに感激したリポーターが大勢楽屋に押し寄せた。評判は上々。ショーの成功を確信した義姉はついにコウイチに正体を明かした。カンパニーの仲間たち全員がショーを支え、成功へと導いた。
しかし、その時、再び事件が起こった。コウイチの兄が作曲した曲の著作権が何者かによって売られてしまっていた。その著作権のサインを見て、義姉はそれがコウイチの兄のサインでないと確信した。それだけでなく、それはよく知っている人のものだった。義姉はそのことには触れずに静かに言った。「著作権が誰のものでもいいじゃない。一番大切なのはあの人が作曲した歌が多くの人々に愛されていることなんだから」しかし、コウイチはその契約書が偽物だと知っていた。兄の肖像画の裏に隠されていた正式な契約書を、コウイチは見つけていたのだ。「だけど、いったい誰がこんなことを?」
その夜、ジュンが東京に帰ると言い出した。彼はショーが成功したのだからもう自分は必要ではない。東京でひとりぼっちのツバサのそばにいたいと言った。一緒に帰ろうというジュンにコウイチは「ショーはツバサのためにも続けなければいけない。ツバサの足が治ったらいつでもカンパニーに戻って来られるように」と言い返した。その時、東京から「ツバサが病院からいなくなった」という知らせが。驚いた義姉とジュンはすぐに東京に帰ることを決意した。しかし、コウイチの反応は予想外だった。「それでいいんだ。ツバサを放っておいてやれ」コウイチは、ツバサが自分の足は完全に治らないのではないかと悩んでいたことを知っていた。そのツバサの恐怖心がツバサを歩けなくしていたのだが、ツバサが自分で病院を抜け出した。コウイチはツバサの足が治ったと確信したのだった。
ツバサは、幸せを運ぶと信じられている白い鯨を待って、海辺のコテージのバルコニーにいた。そこに突然、死んだはずのコウイチの兄が現れた。兄はツバサが自分自身を責め続けて自暴自棄になっていることを非難した。ツバサは興奮し、バルコニーから飛び降り、兄につかみかかろうとした。するとすぐに兄の顔がやさしくなってこう言った。「ツバサ、見てごらん。おまえはバルコニーから飛び出して、私のところまで走ってきた。おまえは完全に治ったんだ。みんなが待っているニューヨークに行きなさい」カンパニー全員がブロードウェイで顔を揃えた。そして兄の眠る墓地に行き、その墓に花を捧げた。
数日後、コウイチは仲間を集めた。事故や災いの謎を解き明かす時が来たのだ。「ついに結論にたどりついた。カンパニーに次々と起こった事故や災難の本当の原因がやっと解った。最初は兄貴の死だった。兄貴が自信を持って書いた作品は、あるジャーナリストによって酷評を受けた。兄貴は夢を打ち砕かれ、自信を失い、自殺した。みんな知っているように、この悪評が全てのはじまりだった。本当はそんな悪評なんて存在しなかったのに。兄貴は何も知らずに自殺した。言い換えれば、兄貴は殺されたんだ。俺の2度の落下事故もアクシデントではなく、すべて仕組まれていたものだった。さらにツバサのバイク事故も。兄貴の曲を売ったのもあんただ。そして俺たちみんなを陥れ、破滅させようとした。タクさん、あんたが犯人だ」
タクは人間ではない。何よりも悲劇を愛している悪霊だ。悪霊がコウイチの兄と家族を獲物にし、破滅させようと魔力をかけていたのだった。コウイチと悪魔との最後の決戦が始まった。二人は橋で戦い、争った。そしてコウイチが橋から落ちた。その直後、銃が撃たれタクの体を貫通した。銃を撃ったのはタクと義姉の子どものリョウだった。リョウは叫んだ。「僕は悪魔の子じゃない!」奇跡的にコウイチは傷ひとつなかった。死んだ兄が彼を助けてくれたのだ。しかし義姉はショックを受けていた。「私は悪魔の子を産んだの?」コウイチは答えた。「あいつは人間じゃなかった。あいつは人間の子の父親にはなれない。リョウは確かに兄貴の子だよ」リョウは悪魔の子か、人間の子か。コウイチたちみんなは、すべての災いが今完全に解き明かされたことをとても喜んだ。リョウの目が怪しい光を放ったことには誰ひとりとして気づかずに・・・。
そして今、兄が天国に戻る時が来た。神との約束で、兄は一度だけ地上に戻ることを許されたのだったが、すべてが終わった今、天国へ戻らなければならないのだった。コウイチ、義姉、ツバサ、ジュン、リョウとカンパニーの仲間たち全員が兄が天国へ帰るのを見送っていた。ブロードウェイでの公演を終え、コウイチのカンパニーは東京へと戻ったが、義姉はリョウとニューヨークに留まることを決めた。「この街はあたかも眠っているように見える。けれど再び活気溢れる、華やかなショービジネスの世界が戻ると信じている。私はこの子とそれに賭けてみたいの」東京ではコウイチたちの凱旋公演の初日を迎えた。ニューヨークからは義姉とリョウが劇場を訪れ、その公演を見守っていた。 |